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マスターのおすすめ本~その11~「不良少年とキリスト」坂口安吾 [本]

大好きな作家を紹介してなかった。
「堕落論」「白痴」「肝臓先生」などが有名ですが、私はこのエッセイが一番好きです。
おすすめ本といいつつ単品では本になってないのでおすすめエッセイです。
太宰の死について書かれていますが、生きることをシンプルに力強く書いています。
私は基本的にエッセイとか人の日記的なものは苦手で敬遠しがちなのですが、これは文章の力に時間を越えて背中を押され自然と涙が出たほどの文章。
やるせない事件に触れると思い出す言葉。

こんな風に渇をいれてくれるおじさんが近所にいたらいいなと思います。
何かに悩んでる人、踏み出したい人におすすめの、厳しくも優しさに溢れた言葉たち。
それまで安吾は俺様でドSな文章に惹かれてたんですが、優しくもあるのかと気づかされ…これは惚れてしまいますよ。会って話がしてみたかったな。


〈以下引用〉
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人間は生きることが、全部である。死ねば、なくなる。名声だの、芸術は長し、バカバカしい。私は、ユーレイはキライだよ。死んでも、生きてるなんて、そんなユーレイはキライだよ。
 生きることだけが、大事である、ということ。たったこれだけのことが、わかっていない。本当は、分るとか、分らんという問題じゃない。生きるか、死ぬか、二つしか、ありやせぬ。おまけに、死ぬ方は、たゞなくなるだけで、何もないだけのことじゃないか。生きてみせ、やりぬいてみせ、戦いぬいてみなければならぬ。いつでも、死ねる。そんな、つまらんことをやるな。いつでも出来ることなんか、やるもんじゃないよ。
 死ぬ時は、たゞ無に帰するのみであるという、このツツマシイ人間のまことの義務に忠実でなければならぬ。私は、これを、人間の義務とみるのである。生きているだけが、人間で、あとは、たゞ白骨、否、無である。そして、ただ、生きることのみを知ることによって、正義、真実が、生れる。生と死を論ずる宗教だの哲学などに、正義も、真理もありはせぬ。あれは、オモチャだ。
 然し、生きていると、疲れるね。かく言う私も、時に、無に帰そうと思う時が、あるですよ。戦いぬく、言うは易く、疲れるね。然し、度胸は、きめている。是が非でも、生きる時間を、生きぬくよ。そして、戦うよ。決して、負けぬ。負けぬとは、戦う、ということです。それ以外に、勝負など、ありやせぬ。戦っていれば、負けないのです。決して、勝てないのです。人間は、決して、勝ちません。たゞ、負けないのだ。
 勝とうなんて、思っちゃ、いけない。勝てる筈が、ないじゃないか。誰に、何者に、勝つつもりなんだ。
 時間というものを、無限と見ては、いけないのである。そんな大ゲサな、子供の夢みたいなことを、本気に考えてはいけない。時間というものは、自分が生れてから、死ぬまでの間です。

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勝ち組だの負け組だの変な言葉が出回ってますが、本当何に勝とうというのだよ。
人生の内容を誰かと競う必要なんかないんだ。
人を、自分を、傷つけるな。 


堕落論 (角川文庫)

堕落論 (角川文庫)

  • 作者: 坂口 安吾
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 文庫





教祖の文学・不良少年とキリスト (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

教祖の文学・不良少年とキリスト (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

  • 作者: 坂口 安吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/07/10
  • メディア: 文庫



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コメント 1

横浜の住人

僕も昔、会社で重役とやり合った話を思い出しました。
組織の長になると1bit(Yes,No)しか無く、下へいくに従って可能性は8bit,16bit,32bit,64bitと増えていく。依って長の人は中間の可能性があるかも知れないが下にはYESかNOしか言ってはいけないとくってかかってました。何かその様に思えます。
実際にその本を読まずしてコメントを書くのは失礼かと思っています。
失礼をお許しください。

by 横浜の住人 (2011-03-08 17:29) 

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